ポジティブに生きることと、さよならを告げること。
知っているひともいるだろうが、私は北海道に移住をした。私は北海道出身だから、ある意味でUターンだ。
しかし、一般的なUターンではない。一般にUターンは、進学もしくは就職で地方を離れた人が、一定期間都市で生活をし、自分の出身地方に戻ることを指す。というか、それ以外でのUターンはほとんど見かけないだろう。
私は、小学生の途中から東京で暮らし始めた。北海道出身をセールスポイントにしていながら、10年以上も東京で生活していた。「北海道出身なんです」『じゃあ高校は北海道?』「あ、いや、かくかくしかじかで……」というやり取りにはもう慣れたし、別に苦ではない。
私の半分は東京でできている。食品成分表示では真っ先に「東京」と書かなければならない。
結論を言おう。東京で生活ができて本当に良かった。
もし北海道でずっと生活していたとしていたら、今の「なりー」にはなっていなかった。あくまで“たられば”だが、きっとそうだ。
たくさんの価値観に支えられた。自分の視野が広がった。色んなものを見聞きした。それらすべてが自分の成分になっている。様々な経験は、自分への教訓をもたらした。
本当は、北海道にもう少し早く帰る予定だった。大学進学を機に北海道に戻ろうとしていたのだ。
しかし、それはうまくは行かなかった。最初はそれをネガティブに考えていた。
ふたを開けてみると、東京での大学生活は非常に“良かった”。多くのコミュニティに恵まれ、自分が勉強したいこともできた。それは自分にとって、確実にプラスだった。
少し前まで、「東京を捨てる」というような後ろめたい感情があったような気がする。友人に「北海道行かないでよ」と引き留められたこともあるし、北海道に移住する一番の理由がなくなったこともある。
北海道への渇望がありながら、多くの視点があった結果の思考だ。色んな事を考えすぎると、前に進めなくなる。そんなこと、自分が一番知っている。
だから、ポジティブに考えた。
東京は私を成長させた。私を私たらしめた。それは間違いのないことだ。
対人関係でポジティブに生きることができるようになったのは、自分が傷つくことをたくさん経験したからだ。当時はとても辛かったけど、「気にしない」というスキルを手に入れることができた。
他人がどう思っているかなんて、気にしたら死ぬ。他人は意外と自分のことを見ていない。
辛い思いをしなければこうはならない、というものでもないと思う。しかし、辛い思いをした対価のスキルくらいは欲しい。
やっと、「さよなら」が言えるようになったかもしれない。東京から離れたって、東京に行くことはいつでもできる。昔と違って、今は連絡する手段がたくさんある。だから、「さよなら」。